あのとき、僕は必死だった。がんばってたつもりだ。日本で報道されるニュースだけでは足りなくて、Twitterでアメリカのニュースなんかをフォローして英語で情報を得たりとか。リモートワークにいち早く切り替えたり。情報を集め、考え、判断し、なんとかしようとして、がんばった。
でも今は反省してる。あの真っ最中に、未来をどうするかを全然考えられてなかったんだ。いや、考えてたと思うけど、難しかったんだ。正直に言おう。わからなかったんだ、そのときは。
みんながリモートワークになって、家でひとりで仕事をし、家族との時間を過ごし、やることも変わった。僕もヨガとか始めたよ。コロナ前は平日に家族と夕食なんて(本当に)1日もなかったのに、毎日一緒に食べるようになった。幸せとか生きがいとか、自分の中でだいぶ変わった。
出社する・しないという表面的な働き方の問題だけじゃなく、”働く”という意味そのものに対して、みんなの価値観も相当変わったはず。会社への帰属意識、個人のキャリアや人生の目標、自分にとって本当に大切なもの。そういったものは、もう元には戻らないと思う。
そして、そこへAIの進化が一気に押し寄せてきた。もはや「人間が決まった場所に座ってずっと作業をする」という「時間を切り売りする」ビジネスはもう成り立たない。作業から価値創造へ。ちょっと見方を変えることで良さに気づいたり、古いものの良さを再発見したり、違うものを組み合わせて新しい発見があったり。どういう価値を生むことでビジネスとして成り立たせていくのかを根本的に考え直さないと。そういう状況に強制的に追い込まれてる。
会社という単位も、体制も、商品も、ミッションも──全部、もう一度ゼロから考え直さないといけなかったんだ。
大変なことだけど、世の中が勝手にそこまで変わってしまったんだからしょうがないじゃん。あのころのタイミングで気づくべきだったし、考えるべきだった。でも毎日一生懸命、感染者の推移を見て今後の流行を予測する、消毒のやり方を考える…なんてことばかりやってて、大切なことが全然できてなかったんだ。
……今すごく反省してる。でも、まだ終わりじゃないんだ。
※写真は中洲の屋台と桜とマジックアワー