ピピットガチャ開発ストーリー (1)

by Ken Murata

ピピットガチャというQR決済で回せるガチャがあります。SONICJAMが開発し、現在は株式会社funboxが事業を行っています。街やイベントなどで見かけた方もいるかもしれません。商品に興味がある方はこちらからぜひ!

自分のこれまでの経歴の中で、SONICJAM時代の中でもかなり重要なプロジェクトだったので、部分的にでも開発ストーリーを残していきたいと思って書き始めます。どうなるかは成り行きまかせ。

ごく簡単にプロジェクトの紹介

  • 2018年ごろから開発を開始し、2021年にサービスを開始しました。
  • SONICJAMが開発し、事業としてはグループ会社のfunboxが行っています。
  • これまでいろいろな場所で利用されています。東京ドームの巨人グッズの販売、米津玄師のライブで物販、SEKIAI NO OWARIのイベント物販、幕張メッセのゲームイベントなど。
  • 街ガチャという企画で宇都宮で餃子のキーホルダーを販売。
  • ANAでアップサイクルガチャを実施。
  • ホテルガチャでは整理券が配布されるほどの人気に。
  • 2023年に特許を取得しました。

なぜこのプロジェクトが始まったのか

  • 私がSONICJAM代表として、新しい事業を模索していた
  • 私が工学部電気電子工学科出身で、電子回路や機械などにも昔から興味があり、デジタルだけでないものづくりがしたかった
  • SONICJAMでその以前から実験的なデバイス開発といったプロジェクトを行っていた
  • SONICJAMのグループ会社に(アナログの)ガチャ事業をやっているあミューズ(現・funbox)という会社があった
  • あミューズが権利を持っているガチャの筐体があった
  • ガチャというのは数十年前からあるUX(ユーザー体験)であり、誰もが良いイメージを持っており、ニーズが確実にあるとわかっていた

こういった偶然が重なったからです。一言で簡単にまとめると、

  • 私がやりたかったから

です。新しい事業やプロジェクトというのはそういうものかもしれません。この場合の「やりたい」というのは、「社会のために」とか考えてひねり出したようなものではなく、子どものときから信じ続けて疑いがなく今後も不変の感情、という意味です。ということは、そういう好きなものややりたいことがめちゃ強いとか沢山ある、という人はそもそも新しいものを生み出したり成功する確率が上がる、ということになります。そうなると、特にこどもとか、いや大人だからこそ、やりたくないことをやる時間を減らしてやりたいことをやる時間が多い人のほうが、成功する確率が上がるんじゃないだろうか。

次はリソースの問題です。「やりたい」だけでは何もできないのは当然です。今回の場合は、「グループ会社がガチャの筐体(権利)を持っていた」ということです。ガチャの筐体は簡単な機構ではありますが、ゼロからつくるのはお金も時間もかかりますし、バンダイなどが持っている特許をかいくぐって新しい筐体を開発するのはなかなか大変です。それと、SONICJAMとしてデバイス開発ができるエンジニアなどがいたということ。アナログの筐体とデジタルのエンジニア、このふたつが揃うことはまずありません。ひとつひとつは珍しいものではありませんが、通常出会うことのないリソースが揃うことによって、これまでにないものが生まれます。

さらにガチャはニーズがあるとわかっていた、というのもポイントです。このあたりは以前のブログにも書きました。よくある新規事業やスタートアップの失敗で「結局ニーズが存在しなかった」というものがあります。「これまでになかったものをつくりたい!」という気持ちはわかりますが、事業の基本は「今すでに存在しニーズがわかっているものをさらによくする」という考え方ではないでしょうか。

こういったさまざまな偶然が重なったことは、あらためて運が良かったなと本当に思います。次回は開発開始してからサービス開始までの苦労話(?)を書いていきたいと思います。たぶん。